心理的安全性(psychological safety)とプロジェクトアリストテレス

心理学

心理的安全性」は、米国の多国籍テクノロジー企業であるGoogle Inc.(グーグル社)が、2012年から約4年の年月をかけて実施した、大規模な「労働改革プロジェクト」です。

 

このプロジェクトは、2016年に人事関連研究の成果報告として「心理的安全性は、成功するチームの構築に最も重要なものである」と発表したことにより、大きな注目を集めました。

 

このプロジェクトは、通称「プロジェクトアリストテレス」と呼ばれています。

2016年1月に、アメリカの経営学誌である「ハーバード・ビジネス・レビュー(Harvard Business Review、HBR)」の誌面を通じて、実行メンバーの1人として大きな関わりを持ってきたジュリア・ロゾフスキ(Julia Rozovsky)氏が、「プロジェクトアリストテレス」の全貌を明かしたことにより、「心理的安全性」は、多くの人の注目を集めることになりました。

   

プロジェクトアリストテレスとは

「プロジェクトアリストテレス(Project Aristotle)」とは、労働生産性向上計画に与えられたコードネームです。

「プロジェクトアリストテレス」では、生産性の高いチームが持つ共通点の洗い出しと成功因子の見極めを行うため、グーグル社内に数多く存在するプロジェクトチームの活動成果と、所属メンバーの言動を細部に至るまで調査分析したものです。

 

グーグル社が、何百万ドルもの資金と、約4年の歳月を費やして実施した「プロジェクトアリストテレス」ですが、思いがけず難航したといいます。

というのも、チームの働き方そのものやメンバー構成などに関しては、生産性の高いチームに共通する目立った要因が抽出されなかったからです。

 

最終的に導き出された「解」は、「他者への心遣いや同情、あるいは配慮や共感」といったメンタルな要素の重要性であり、それによって醸成されるチーム内の「心理的安全性」と呼ばれる概念でした。

心理的安全性とは

「心理的安全性」とは、他者の反応に怯えたり、羞恥心を感じることなく、自然体の自分を曝け出すことのできる環境や雰囲気のことです。

「心理的安全性」は、「サイコロジカル・セーフティ(psychological safety)」という英語を和訳した心理学用語です。

 

「心理的安全性」とは、こんな発言をしたらリーダーからにらまれる、他のメンバーにバカにされるといった不安を持たず、本来の自分を安心してさらけ出し、それが受け入れられる場の雰囲気のことをいいます。

 

「プロジェクトアリストテレス」では、そうした環境(心理的安全性)が担保されているチームほど、高い生産性を発揮していると結論づけました。

成功するチームを作る5つの鍵

グーグル社は、は自社の情報サイトである「re:Work」のなかで、成功するチームを作るための5つの鍵を公開しています。

1.心理的安全性(Psychological Safety)
2.信頼性(Dependability)
3.構造と明確さ(Structure&Clarity)
4.仕事の意味(Meaning)
5.仕事のインパクト(Impact)

そのなかで、「心理的安全性」が、他の4つの鍵の土台であり、5つの鍵の中で、Googleが最も重要だとしています。

 

心理的安全性がもたらす効果

「心理的安全性」がもたらす効果としては、以下の5つがあげられます。

1.報連相の機会が増える
2.アイデアの質が高まる
3.主体性が向上する
4.離職率を低下させる
5.残りの鍵の土台を作る

心理的安全性を高めるのアプローチ

心理的安全性を高めるには、以下の3つのアプローチがあります。

1.組織的に意見を交換する機会を設ける
2.個人的に自発的な発言や質問が出来る環境を作る
3.メンバーにチームの貴重な一員であると認識してもらう

近年、「職場内での雑談」が、社内コミュニケーションや情報共有を円滑にし、生産性向上に有効に働くといった趣旨の研究結果をよく耳にします。

これは、コミュニケーションだけが要因ではなく、そもそも雑談が活発に行われるような職場は「心理的安全性」が高いということができます。

その結果として、遠慮なくモノが言える安心感が、生産性向上に寄与していると考えられるでしょう。

 

日本企業が、まだまだ立ち遅れているダイバーシティ&インクルージョンの推進も、「心理的安全性」がベースになければ始まりません。

 

しかし、「心理的安全性」は、下手をするとぬるま湯状態を生み出しかねません。

チームとそのメンバーに、大きな責任や使命、目標などが与えられていなければ、雰囲気が快適なだけに、ただの仲良しグループになりやすく、個々の働き方も、現状維持をよしとする方向にに流れてしまうかもしれないからです。

この点には、大いに気をつける必要がありそうです。

 

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