「返報性」は、社会学者や人類学者によると、人間文化の中で、最も広範囲に存在し、また、最も基本的な要素となっている規範のひとつと言われています。
「返報性」は、「返報性の原理」、「返報性の法則」、「返報性のルール」など、さまざまな呼び方や、使い方をされることもありますが、どれも同じことです。
この「返報性」は、アメリカを代表する社会心理学者である、ロバート・B・チャルディーニ氏による世界的なロングセラー『影響力の武器 – なぜ、人は動かされるのか(原題:”Influence: The Psychology of Persuasion”』のなかでも、最も強力な原理のひとつとして取り上げられています。
返報性とは
この「返報性」の持つ力は、非常に強力です。
なぜなら、「返報性」を守らない人は、社会的に不適格とみなされて、嫌われてしまうからです。
人間社会には、
– 受け取る義務
– お返しをする義務
という社会的圧力が存在します。
「返報性」とは、「お返しをする義務」によって生じる原理です。
「返報性」は、その効果を悪用することも可能です。
「返報性」を悪用しやすくしているのは、「受け取る義務」です。
この「受け取る義務」があることによって、私たちは、恩義を感じる相手を、自分自身で選ぶことが難しくなります。
また、それによって、「お返をする相手」も、自分で選ぶことができなくなるのです。
返報性の危険性
「返報性」の持つ力は非常に強いため、
という怖さがあります。
この「返報性」の怖さは、私たちが誰かに借りがあると、
ということが起こりかねないということです。
さらに困ったことに、
ということです。
これは、私たちが、
ということを意味しています。
返報性の強力さ
私たちは、誰かの「好意」や「親切」に対して、通常は、無碍に拒否するようなことはしないものです。
そして、「好意」や「親切」を受け取った以上は、お返しをしないということは、心理的に難しいのです。
たとえ、それが、策略による「好意」や「親切」であっても一緒です。
私たちは、恩義を受けたままでいると、心理的に不快になるように条件付けられています。
また、心理的負担から開放されたいという思いから、ときに、受けた恩義以上のお返しをしてしまうことすらあります。
さらには、相手が誰であろうとも、その力は働いてしまいます。
このように強力な「返報性」に対して、私たちは、それを悪用しようと企む人に対して、為す術がないのでしょうか?
返報性への対策
基本的には、誰かの「好意」や「親切」は、ありがたく受け取ります。
なぜなら、その「好意」や「親切」が心からのものなのか、その裏に何らかの「悪意」や「意図」、「策略」が潜んでいるのかを、判断することが難しい場合も多いからです。
その結果として、それが心からの「好意」や「親切」で会った場合には、将来的に「お返し」をする必要があることも、心に留めておきます。
しかし、
必要があります。
つまり、
と自覚することです。
返報性のルールに従えば、
ということになります。
あなたに対して「搾取」を試みる相手が、くれるというものは、何であれ、ただ、もらっておけばいいのです。
そして、そのことによって、相手の要求に屈する必要はありません。
つまり、
ということです。
更なる効果
返報性(返報性の原理・返報性の法則・返報性のルール)には、次のようなテクニックや効果と合わせて使われると、更に効果が強くなることがあり、ますます手に負えないものとなります。
ただし、これらについても、相手のそのような意図を見抜くことさえできれば、その罠から逃れることが可能になります。
そのためには、そのような手法があることを知っておくべきです。
これらの原理については、別のページにまとめています。


おわりに
翻訳版なので仕方がないことですが、『影響力の武器』シリーズは、正直言って読みにくいです。
実験結果やエビデンスは重要ですが、それによって情報量が膨大になります。
また、個人的には、余計な比喩表現などがないほうが、読みやすくなるようにも思います。
これらのテクニックを、営業や販売などの仕事などに応用すれば、大きな効果や利益が見込めると思います。
しかし、この本を部下やチームメンバー全員に読ませるのは、簡単ではないかもしれません。
要点を簡潔にまとめた、プレゼン資料等で共有できれば、効果的でしょう。
また、より深く内容を理解するためには、オーディオブックの活用が助けになるでしょう。
どうせ買うなら、3冊セットの、『影響力の武器:最新パック』がいいと思います。
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