人間の知覚には、必ず「コントラストの原理」というものが働きます。
これは、「知覚のコントラスト」とも呼ばれます。
私たちには、なにも比較対象がない場合と、比較対象がある場合とでは、物理的な現象にしろ、商品やサービスにしろ、印象や価値がまったく変わって感じられるのです。
この原理は、日常のさまざまな場面で利用されています。
コントラストの原理とは
「コントラストの原理(知覚のコントラスト)」は、人間の脳の性質を利用した原理です。
仕組みになっています。
「コントラストの原理(知覚のコントラスト)」とは、
「知覚のコントラスト」のカギは、「アンカリング」です。
のことをいいます。
そして、この「アンカリング」は、たいていは、意図的に行われます。
例を挙げると分かりやすいと思いますので、いくつか例を挙げながら説明します。
「知覚のコントラスト」例1
重さが同じ「10Kg」の物体でも、その前に「5Kg」の物体を持ったあとと、「15kg」の物体を持ったあととでは、重さの感じ方がまったく違います。
もちろん、どちらの場合も、後者の物理的な重量は「10Kg」で、重さの差は、どちらも同じく「5Kg」です。
しかし、明らかに「5Kg」のあとの「10Kg」は「重たく」感じ、「15Kg」のあとの「10Kg」は「軽く」感じます。
「知覚のコントラスト」例2
温度が同じ「10℃」の水でも、その前に「5℃」の水に手をつけたあとと、「15℃」の水に手をつけたあととでは、温度の感じ方がまったく違います。
もちろん、どちらの場合も、後者の物理的な温度は「10℃」で、温度差は、どちらも「5℃」です。
しかし、明らかに「5℃」のあとの「10℃」は「温かく」感じ、「15℃」のあとの「10℃」は「冷たく」感じます。
これらの例から分かるように、
その結果、私たちは、面白いことに、「重い・軽い」「温かい・冷たい」など、正反対の感じ方をしてしまうのです。
実際には、同じものであるにもかかわらず。
このような、心理的傾向のことを「コントラスト効果」または、「知覚のコントラスト」と呼んでいます。
ビジネスへの応用
「コントラストの原理(知覚のコントラスト)」は、ひろくビジネスの世界でも利用されています。
上記の例でいえば、価格のアンカリングによって、「高い・安い」の判断を、意図的に操れるということになります。
ビジネスへの応用1
同じ「10,000円」の商品でも、先に「5,000円」の商品を勧められた場合と、先に「20,000円」の商品を勧められた場合とでは、価格の感じ方がまったく違います。
もちろん、どちらの場合も、価格は同じ「10,000円」ですが、明らかに「5,000円」の後の「10,000円」は「高く」感じ、「20,000円」の後の「10,000円」は「安く」感じます。
または、
ビジネスへの応用2
顧客を、実際に販売や賃貸に出したい物件の前に、あまり魅力的でない物件(当て馬物件)に案内してから、本命の物件に案内すると、本命の物件が、より魅力的に感じてもらえるのです。
ビジネスへの応用3
これらのように、
さらには、当たり前のように使われている「松竹梅の法則」や「ゴルディロックス効果」も、「コントラストの原理(知覚のコントラスト)」を利用したマーケッティング戦略といえます。
「松竹梅の法則(ゴルディロックス効果)」については、別のページに書きます。
恋愛や人間関係への応用
また、「コントラストの原理(知覚のコントラスト)」は、恋愛や人間関係に応用することもできます。
「合コンでは、自分よりもルックスの良くないメンバーだけを集めろ!」というつもりはありませんが、それも、れっきとした「知覚のコントラスト効果」です。
ほかにも、恋愛や人間関係において、「コントラストの原理(知覚のコントラスト)」を利用するためには、
・異性を選ぶ基準が低くアンカリングされている人を狙ってみる
などの方法が考えられます。
しかし、メッキはいつかは剥げてしまうものです。
心理的なテクニックを磨くと同時に、しっかりと、人間性などの中身も磨きたいものです。
まとめ
「コントラストの原理(知覚のコントラスト)」は、たいていの場合、大いに効果を発揮します。
それは、「コントラストの原理(知覚のコントラスト)」が、人間の脳の性質を利用した原理だからです。
人間の脳は、客観的ではなく、相対的に反応する仕組みになっているので、仕方がないことです。
そして、恐ろしいことに、「コントラストの原理(知覚のコントラスト)」は、
なのです。
巧みな「アンカリング」によって、私たちの脳は、しばしば、相手の思惑どおりに決断してしまうのです。
だからといって、くれぐれも悪用しないようにして下さいね。
コメント